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卒業生に送る詩「生徒諸君に寄せる」宮沢賢治

私が高3の担任をしていたとき、卒業生に贈った詩がある。
宮沢賢治の次のような詩である。


生徒諸君に寄せる  <宮沢賢治>

 この四ケ年が
 わたくしにはどんなに楽しかったか
 わたくしは毎日を
 鳥のように教室でうたってくらした
 誓っていうが
 わたくしはこの仕事で
 疲れをおぼえたことはない

 諸君よ紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
 諸君はそのなかに没することを欲するか
 じつに諸君はその地平における
 あらゆる形の山岳でなければならぬ

 諸君はこの颯爽(さっそう)たる
 諸君の未来圏から吹いてくる
 透明な清潔な風を感じないのか

 それは一つの送られた光線であり
 決せられた南の風である
 諸君はその時代に強いられ率いられて
 奴隷のように忍従することを欲するか
 むしろ諸君よさらにあらたな正しい世界をつくれ
 宇宙は絶えずわれらによって変化する
 潮汐や風
 あらゆる自然の力を用いつくすことから一足進んで
 諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ
 新しい時代のコペルニクスよ
 あまりに重苦しい重力の法則から
 この銀河系を解き放て
 新たな時代のマルクスよ
 これらの盲目な衝動から動く世界を
 すばらしく美しい構成に変えよ

 新しい時代のダーウィンよ
 さらに東洋風静観のチャレンジャーにのって
 銀河系空間の外にも至って
 さらに透明に深く正しい地史と
 増訂された生物学をわれらに示せ
 衝動のようにさえ行なわれる
 すべての農業労働を
 冷たく透明な解析によって
 その藍いろの影といっしょに
 舞踊の範囲に高めよ

 新たな詩人よ
 雲から光から嵐から
 新たな透明なエネルギーをえて
 人と地球にとるべき形を暗示せよ


  この詩の「キャレンジャー」とは、1872年から1876年にかけて太平洋各地や大西洋の南半球部分で学術調査を行なったイギリスの海洋調査船「チャレンジャー(挑戦者)」のことである。
 ずっとのちに米国で打ち上げられたスペースシャトルもチャレンジャーと命名されたことを思い出す。

 この詩は「春と修羅」におさめられたものであるが、原作は宮沢賢治の詩作ノートのすみに書かれたものであり、未整理未完成だったものもある。

 この詩のスケールの大きさが何ともスゴイ!としか言いようがない。
 そういえば私もこの仕事で疲れを感じたことはない。

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